竜温「総斥排仏弁」第12回史料精読討論要旨

今回の輪読箇所は、正司考祺の『経済問答秘録』批判がなされていたが、それと関連して、近世前期の排仏論でも経世論の文脈から仏教批判がなされているが、近世後期における経世論に対する仏教界側の危機感として、諸藩による宗教政策として、浄土真宗の弾圧が現実に行われるのではないかという危惧を竜温が抱いていた可能性がある、という指摘がなされた。その意味で近世前期と後期における経世論が持つ思想的な位置づけが変化したことで、今回の輪読箇所以降は、正司考祺への批判に大部分が割かれていることの意味合いが読み取れるとの質疑がなされた。また、平田国学よりも正司考祺のような経世論の立場による排仏論を、竜温も危機感を抱いているため、輪読で言及されている発言を今後どう読み解いていくか、ということも課題になってくると思われる。

文責:岩根卓史