竜温「総斥排仏弁」第六回史料精読討論要旨

参加者は四名。今回の報告は、まず訳文を検討したうえで、竜温における歴史認識について焦点をあてて、考察した。討論においては、「安心」をめぐる解釈の検討がなされ、注釈において「宗教的な心の落ち着き」という解釈では、文脈が通らないので、「思想的な中心」という語義解釈を示した。また、竜温における〈国学史〉や〈儒学史〉をめぐる叙述は、現代でも習うような学問史を構成しており、幕末期には、ある程度、共有されていた認識ではないか、という提起を行った。その上で、『儒林評』や『先哲叢談』などの評文を元にした可能性についても討論が行われた。また、民衆宗教史研究だけなく、幕末維新期における仏教思想をめぐる研究は、排仏棄釈運動を除いては、まだ明らかにするべき課題が残っており、テクストを通して、方法的視点を含めた検討が必要だということも討論がなされた。引き続き史料精読を通じて、議論を積み重ねたいと思っている。

文責:岩根卓史