竜温「総斥排仏弁」史料精読第五回

参加者は四名。まず、報告者による訳文についての検討が行われた。訳文で解釈が難しい箇所についての訳や、「名賢」という訳語を天皇に限定することの是非などがまず討論された。さらには近世の神道家たちの古事記の位置づけが、いかなるものだったのか、ということも本居宣長以外の文脈において考える必要性があるということも議論になった。そのうえで、竜温の議論の元となるような書物を参照にした可能性や、舎人親王における日本書紀の編纂は、当該期において、どのような意味合いを持ったか、など多岐にわたった。今回の史料精読報告は、主に山崎闇斎に言及した箇所であったが、山崎闇斎の位置づけが竜温において一貫していたわけではないという指摘は、重要であろう。また、竜温は近世の神道家のすべてを「排仏論者」と位置づけていないことは、今後も竜温が「排仏論」として峻別するための視座がいかなるものであるか、という点を考えるには、重要な箇所であったと思われる。今後も引き続き史料の検討をすることを確認し、討論を終えた。

文責:岩根卓史