竜温「総斥排仏弁」史料精読第三回(討論要旨)

今回の参加者は三名。報告では史料の訳文および輪読箇所の論点を提示したうえで、史料に即しながら考察を試みた。考察では林羅山の排仏論と聖徳太子批判について、検討したうえで、江戸前期の儒仏論争と、幕末期の護仏思想には、議論の構造として差異が認められるのではないか、という疑問を提示してみた。質疑応答では、本文中に出てくる「文明文化」に対する訳として、「文明と文化」と表現したことに質疑が行われた。報告者は、違和感を抱いたものの、他に訳語として適当な表現が見当たらず、文脈に即した解釈をするほかはなかったとし、改めてテクストへの向き合い方を痛感せざるをえなかった。また、聖徳太子の位置づけが、江戸時代の儒仏論争で占める意味合いについても議論がなされた。さらに三教一致論のあり方を、報告では本質論のように捉えているのではないか、という指摘も受けた。今回も様々な課題が提示されたが、輪読を通して今後解決していきたい。