竜温「総斥廃仏弁」史料精読第一回

参加者は四名。報告では、現代語訳を付したうえで、先行研究の概略を述べた。また精読テクストに関する課題もあわせて提示した。質疑では、現代語訳に関しての解釈についての妥当性が指摘された。「唯浄土門、殊真宗ニ在リ。然ルニソノ信ズルモノハ多クミナ野民ニ在リ」(p106)という箇所は、逆接として理解できるとの質問がなされた。

報告者は意訳をすれば、「真宗」が依拠している立場として、「野民」により、広く支持されていることが根拠だと考え、「しかしながら」というよりも「そうであるから」という順接を訳語として取ったと答えた。

さらにこのテクストにみられる「宗門」意識と、「諸教一致」に依拠した言説との矛盾をどのように考えるべきかという意見もなされた。また幕末護法論のテクストを、そのまま「近代仏教ナショナリズム」の萌芽として読み取るべきかどうか、ということに関しても討論も行われ、質疑は終了した。

文責:岩根卓史